札幌高等裁判所 昭和54年(う)107号 決定 1979年5月30日
主文
本件控訴を棄却する。
理由
記録によれば、被告人は、前記被告事件について、昭和五四年四月一八日函館地方裁判所において有罪判決の宣告を受けたものであるが、これに対し、被告人本人又は原審判決宣告当時の弁護人から控訴の申立はなく、ただ、右の判決宣告日の翌日に被告人の妻中山サチ子が選任した弁護人山形道文作成名義の本件控訴申立書が、同月二〇日原審裁判所に提出されたに過ぎないことが認められる。しかしながら、弁護人山形道文は、原審判決宣告後に選任された者であるから刑事訴訟法三五五条所定の独立上訴権を有する弁護人に該当せず、また、原審判決宣告後に被告人の妻によって選任された者であるから被告人のために控訴申立をする権限も有しない(最高裁判所昭和二四年一月一二日大法廷判決、刑集三巻一号二〇頁及び同裁判所昭和四四年九月四日第一小法廷決定、刑集二三巻九号一〇八五頁参照)。したがつて、本件控訴の申立は、明らかに法令上の方式に違反した不適法なものといわなければならない(なお、被告人と右弁護人とが連署した当裁判所宛の弁護人選任届が昭和五四年五月一八日に提出されているけれども、その提出は本件控訴申立期間満了後のものであることが明らかであるから、右弁護人選任届の提出によつて本件控訴の申立が有効となる余地はない。)。
よつて、刑事訴訟法三八五条一項により主文のとおり決定をする。